ニケシュ・アローラの退任劇きっかけでソフトバンクの株主総会の動画見たら孫さんすげぇーってなった話
孫さんの後継候補だったにも関わらず突然の退任となったニケシュ・アローラに対してSECが調査に乗り出してるとか。
退任から遡ること今年の1月、とある投資家グループからアローラ氏の適性や利益相反を問う書簡がソフトバンクに送り付けられていて、6月20日にソフトバンクの特別調査委員会は「シロ」判定を下したわけですが、その翌日にアローラ氏の退任発表。
代表取締役の異動(退任)に関するお知らせ | プレスリリース | ニュース | 企業・IR | ソフトバンクグループ
翌22日の第36回定時株主総会には代表取締役副社長として席に座るものとして事前に株主に通知が行っていた中での退任劇だったので、誰しもが「あやしすぎる、、、」と思わざるを得ないところ。アローラ氏がシニア・アドバイザーを務めるシルバーレイクというPEを手掛ける会社との関係を指摘する報道なんかもあったりしますが、真相はなんともわからないところであります。
・・・といった中で、なんとなくソフトバンクの株主総会の動画を見始めたら、面白すぎて孫さんすげぇーってなった話です。
ひとまず動画はこちらです
動画の長さは2時間23分と映画一本分以上!実際の開催時間は2時間51分で過去最長を記録したとか。
冒頭、ニケシュのお別れの挨拶から始まります。
ソフトバンクは素晴らしかった、と。
退任理由の詳細について触れられることはなかったわけですが、挨拶が終わって立ち去るニケシュに孫社長が小さい声で「サンキュ、ニケシュ」と呟く横顔にはなんとも言えない哀愁を漂わせています。
朝起きたらニケシュに電話して、夜寝る前にもニケシュに電話して、っていうオシドリ夫婦生活を送っていたにも関わらず別れなくてはならなくなったわけですから、思うところがたくさんあるのでしょう。
そこから足もとのソフトバンクグループの説明に入ります。
国内通信事業に関して特筆すべきはフリーCF創出力の高さ。
事業セグメントがFY15Q3に少し変更になったので過去との比較がやりくくスライドの通りFY14との比較しか見れないわけですが、国内通信事業は安定した収入がある一方で、設備投資が一巡したことから利益が出やすい体質になってきている、という流れは変わらないようです。
この安定収益源があるから孫さんは傍目から見ると博打にも映る大型投資ができるわけですね。
次にスプリント。
これまでみんなの席を回ってゴミを回収してくれていた清掃員に辞めてもらって各自でゴミ箱に捨てに行くようにしたとか、最初からそうしてろよ的な取り組みを積み重ねてコスト削減を進めたことも相まって営業利益は黒字化。純利益の黒字化も近い。
Tモバイル買収失敗で全米進出の出鼻を挫かれて一時意気消沈していた孫さんですが、やっと光が見えてきた。おかげで孫さんの頭のテカリも絶賛回復中。
次にヤフー、ペッパーに触れたのち、アリババに始まる投資実績へ。snapdealなどいくつか取り上げてその絶大な伸び具合を、いかにもソフトバンクらしい絶対値を示さず伸び率だけを強調するスライドでご紹介。
とはいえ、こうした過去の投資があったからこそ、この6月に立て続けに発表していた投資資産の資金化という果実が得られたわけです。
ガンホー株の売却なんかも騒がれていましたけど、こうしてみると小粒ですね。
これまでアリババ株なんて特にそうですけど、含み益すげぇー、でも売ることないんでしょ、なら含みは含みでしかないよね、ってちょっと冷めた目で見る向きもあったわけです。でも、こうして実際にキャッシュ化したとなると見る目も変わりますね。
注目されるのは今回キャッシュ化した2兆円弱を何に使うのか? そもそも'16年3月末時点で約2.5兆円の現預金を持っていたところに2兆円追加で都合4.5兆円。何もしないはずもないですが、今のところ特にアナウンスもないのでどうなるのかは分かりません。債務の返済に回すのか、はたまた大型投資が出てくるのか。
ニケシュの退任発表と同時にリリースされた顧問就任のリリースを見ると、「いくつかのクレイジーな構想も実現したい」って孫さん言ってますので、なーんか飛び出してくるんでしょうね。
そのクレイジーなのってナニ?ってことになると、次に続く「Singularity(シンギュラリティ)」というのがヒントになるのでしょうか。
「人類史上最大のパラダイムシフト」
・・・かなり気合を感じる入り方です。
そして孫さんは「この『シンギュラリティ』が何かご存知ですか?」。
会場に問いかけます。
およそ3%の人の手が挙がったようですが、残念ながらぼくは知りませんでした(汗)
ここでの「シンギュラリティ」は技術的特異点のことで、それが何かというと、、、
そう、人工知能が全人類知能を超えるときを指しています。
孫さんは言います。「Google検索などに代表されるように知識の面では既に人間を超え始めている。今度は知恵の面でも人間を超え始めるんです。」
ここ数年、ロボットだ、自動運転だ、VRだ、ディープラーニングだとなんだと、非常に盛んになってきています。そういったAIといったものに未来を感じる機会が多くなってきてはいますが、その知能水準は言ってしまえばまだ小鳥程度といった印象です。まだまだ人間の知能水準には到底及ばない。
それが近い将来、人間の知能、それも人間ひとりの知能だけでなく、全人類の知能を凌駕する人工知能が形成されるというのです。
このシンギュラリティを提唱する人の中で有名なのがレイ・カーツワイル*1。彼は、人工知能が全人類知能を超えるとき、つまりシンギュラリティは2045年に来ると予測しているようです。その世界は、たとえばヒトの頭脳はすべてデジタル化可能、ヒトの臓器はナノロボットで代替可能になっていてヒトの「死」がなくなっていたり、完全なVRの世界にヒトが存在するとか。完全にマトリックスとかターミネーターの世界ですね。本当にそんなときは来るのでしょうか?
孫さんは来ると信じています。そして、人工知能と人類が共存する世界を作るために人生を捧げると。
そして、社長続投を決意した理由もここにあると語ります。
「60歳の誕生日パーティーで、乾杯のあと『明日からニケシュが社長になる』。そういって皆を驚かせるつもりだった。でもシンギュラリティを前にして、もう少し社長でいたいという妙な欲が出てきた。それでニケシュに『申し訳ない』と伝えた。」と。
突然の退任劇は、ニケシュ・アローラに起因する部分もあるのかもしれませんが、孫さんの心変わりの要因の方がより強そうです。そして孫さんは社長を「最低でも5年、長くて10年」やるようです。つまり69歳まで。
およそ1年前、スプリントの再建が完了したら社長の座を譲ることを示唆していたことを思うと、かなり話が変わってきてますね。
スプリントを再建したら孫さんは引退ではなかったのか?のちの質疑応答でも明らかになるのですが、シンギュラリティと通信の関係について孫さんは、通信網は人間でいう神経なんだといいます。つまり人工知能は単独で存在するのではなく、あらゆるものに神経を張り巡らせるかの如く繋がって存在することになるので、その繋がりを支える通信網が重要なんだと。
こうなると今でこそスプリントの再建に注力しているわけですが、孫さんが見ているのはそれよりももっと先なんだということを思い知らされます。ソフトバンクもスプリントも通信業界でトップに立つとかが目的ではなく、通信はあくまでも手段に過ぎないわけです。
でも、そうなると今のソフトバンクグループに足りないのは何なのか?それは「AI」ということになるのでしょうか。つまり、神経はあるけど頭脳がない。だとすれば、孫さんが次に買収をするとすれば、その「AI」関係のところになるのかもしれませんね。
しかし、孫さんは尽きることがないですね。10年後にはまた「やっぱり社長を続ける」と言ってそうな気がします。株主総会の席上、日本電産の永守会長も言い放っています。
「孫さんは、ホラとウソが混ざったような人間だ」
「69歳になったらまた10年やるって言いますよ」
トコトンやって、そしていよいよ孫さんが社長を引退するとなったとき、こう言うのかもしれません。
「明日から社長はpepperです。でもこのpepperには僕がインストールされています。」
孫さんの目指すところが果てしなすぎて、ぼくはただただ指を咥えて見てしまうだけですが、次の2冊を読むと孫さんの行動力や発想の源泉に触れることができます。そして間違いなくモチベーション上がります(笑)
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株主総会の孫さんのプレゼン。新商品発表会とか新ビジョン発表の場とは違って、盛り上がるような場の雰囲気ではないのですが、孫さんのしゃべり口、間の取り方、テンポのつけ方は流石。ぐいぐい惹き込まれていきます。プレゼンの心の持ち方あたりは、この本が参考になります。
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